Last Updated on 2021-08-05
ここでは、「TeXを用いてレポートを提出しろ」と言われた学生向けに、文書を作成する方法について説明します。
正確さよりもわかりやすさを重視した書き方をしているため、厳密には正しくない表現や、短絡的な説明が混ざることがありますが、ご容赦ください。インストール方法や環境については、前回のTeXのインストールを参照してください。また、今回省略した細かい体裁の整え方などはTeXの文章の書き方(応用)などにまとめています。是非ご活用ください。
サンプルは文書全体を掲載しているため、全文コピペでサンプルがタイプセットできます。是非新しいファイルを生成して、タイプセットしてみてください。右上にコピーボタンもあります。
表やコードは横スクロールで全体を見ることができます。
文書の設定
\(\LaTeX\)では文章を書く前に、必ず\documentclass[]{}
というおまじないをする必要があります。[]
はオプションを指定する場所で、文字サイズや用紙のサイズなどを記入します。複数指定したい場合は、,
で区切ります。以下に私がよく用いるものを例として挙げます。
オプション | 説明 |
---|---|
10pt |
本文の文字のサイズを10ポイントに設定します。 |
a4paper |
用紙のサイズをA4に設定します。 |
dvipdfmx |
PDFファイルで出力することを指定します。 |
{}
は文書クラスを指定する場所で、文書の章立てなどを決定します。日本語で文書を作成するのであれば、jsarticle
で十分だと思います。
\documentclass[10pt, a4paper, dvipdfmx]{jsarticle}
本文の書き方
文書の設定ができたので、本文の書き方の説明に入りたいと思います。
通常の文字
通常の文字は、以下のように\begin{document}
と\end{document}
に囲まれた範囲内に入力します。日本語か英語かに関わらず、そのまま入力して構いません。
\documentclass[dvipdfmx]{jsarticle}
\begin{document}
ここに本文を入力します。
\end{document}
特殊な文字
\(\LaTeX\)では、コマンド等で使用する文字を本文にそのまま入力することができません。そこで、下記の表のようにエスケープして入力します。この際、必ず半角で入力するようにしてください。
出力 | 入力 | 出力 | 入力 |
---|---|---|---|
\(\#\) |
\# |
\(\$\) |
\$ |
\(\%\) |
\% |
\(\&\) |
\& |
^ |
\textasciicircum |
~ |
\textasciitilde |
| |
\textbar |
\(\_\) |
\_ |
\(\backslash\) |
\textbackslash |
\(Y\llap=\) |
Y\llap= |
\(\{\) |
\{ |
\(\}\) |
\} |
< |
\textless |
> |
\textgreater |
この他にも様々な特殊記号が存在しますが、ここでは割愛させていただきます。\
の後に複数文字を入力する必要がある文字の場合は、後ろにスペースを入力しないとエスケープの切れ目がわからなくなってしまうため注意が必要です。
\documentclass[dvipdfmx]{jsarticle}
\begin{document}
本文中で、\#のように入力します。\textbackslash などを入力する場合は、後ろにスペースを入力する必要があります。
end{document}
文章見出しの付け方
文章に見出しをつけるには、以下の表のように入力します。ただし、これは文書の設定でjsarticle
を設定した場合のものになります。
入力 | 概要 |
---|---|
\section{} |
節 |
\subsection{} |
小節 |
\subsubsection |
小々節 |
{}
の中には、見出しに設定したい文章を入力します。
\documentclass[dvipdfmx]{jsarticle}
\begin{document}
\section{節の見出し}
ここに節の本文を入力します。
\subsection{小節の見出し}
ここに小節の本文を入力します。
\subsubsection{小々節の見出し}
ここに小々節の本文を入力します。
\end{document}
改行の方法
行頭に空白を開けた改行を行いたい場合は、\par
を用いるか、空白行をはさみます。単にエディタで改行をすることで空白を開けない改行を行うことができますが、\\
と入力することで強制改行を行うことができます 。
\documentclass[dvipdfmx]{jsarticle}
\begin{document}
行頭に空白を開けた改行を行う場合、次のように行う。\par
以下のように空白行を挟むことでも実現できる。
行頭に空白を開けない場合は次のように行う。\\
一般的には、単にエディタで改行することが多い。
\end{document}
箇条書き
箇条書きをする際には、番号ありか番号なしかによって以下のように書き分けます。
番号なし箇条書き
番号なし箇条書きは、\begin{itemize}
と\end{itemize}
で囲まれた範囲内に、\item
を付けて入力します。
\documentclass[dvipdfmx]{jsarticle}
\begin{document}
番号なし箇条書き
\begin{itemize}
\item リンゴ
\item バナナ
\item オレンジ
\item ピーチ
\end{itemize}
\end{document}
番号あり箇条書き
番号あり箇条書きは、\begin{enumerate}
と\end{enumerate}
で囲まれた範囲内に、\item
を付けて入力します。
\documentclass[dvipdfmx]{jsarticle}
\begin{document}
番号あり箇条書き
\begin{enumerate}
\item りんご
\item ばなな
\item おれんじ
\item もも
\end{enumerate}
\end{document}
改ページの方法
改ページを行いたい場合には、\newpage
を用います。ただし、後述の図表の出力が終わっていない場合は、\clearpage
を用いて図表を強制出力させることもできます。
\documentclass[dvipdfmx]{jsarticle}
\begin{document}
1ページ目です。
\newpage
2ページ目です。
\end{document}
タイトルと著作者の設定
文書にタイトルと著作者を設定する場合は\title{}
にタイトルを、\author{}
に著作者を入力し、本文に\maketitle
を加えます。日付は出力した日付が自動的に挿入されますが、特定の日付を指定したい場合は、\date{}
を用います。
\documentclass[dvipdfmx]{jsarticle}
\begin{document}
\title{適当なタイトル}
\author{適当な著作者}
\maketitle
ここに本文を入力します。
\end{document}
参考文献の書き方
参考文献を入力する場合は、\begin{thebibliography}{99}
と\end{thebibliography}
で囲まれた範囲内に、\bibitem{}
を付けて入力します。\bibitem{}
の{}
に任意の識別子を入力することで、本文から参照しやすくなります。
\documentclass[dvipdfmx]{jsarticle}
\begin{document}
このように参考文献\cite{ex}が参照できます。参考文献\cite{some}も参照できます。
\begin{thebibliography}{99}
\bibitem{ex} 架空の著者 『架空のタイトル』第N版 (架空出版社, 20xx)
\bibitem{some} 架空の著者 『架空のタイトル』 第N版 (架空出版社, 20xx)
\end{thebibliography}
\end{document}
数式の使い方
数式は、文章中に直接入力したり、文章から独立して入力したりすることができます。また、数式中でのみ使用可能な特殊な文字もあります。
文章内数式
文章中で数式を入力する場合は、$
で囲います。
\documentclass[dvipdfmx]{jsarticle}
\begin{document}
ここに$x + y = z$のように数式を入力します。
\end{document}
独立した数式
文章から独立して数式を入力する場合は、\begin{equation}
と\end{equation}
で囲まれた範囲内に入力します。
\documentclass[dvipdfmx]{jsarticle}
\begin{document}
ここに本文を入力します。数式(\ref{eq:sample})を参照します。
\begin{equation}
\label{eq:sample}
x + y = z
\end{equation}
後ろからでも数式(\ref{eq:sample})を参照できます。
\end{document}
上記のように独立した数式に\label{}
、本文に\ref{}
と入力することで、数式の番号を自動的に参照してくれます。これを相互参照といいます。
特殊な文字や表記
数式内では、x_{2}
のように入力することで下付き文字、x^{2}
のように入力することで上付き文字を入力できます。このように、数式を入力する上で便利な数式や数学記号、ギリシャ文字などを一部紹介します。ただし、縦に複数行かかる記号等、文章内数式ではレイアウトが多少崩れる数式もあります。
出力例 | 入力 | 概要 | 説明 |
---|---|---|---|
\(x^{2}\) |
^{} |
上付き文字 |
一文字のみの場合は{} を省略しても良い。 |
\(x_{2}\) |
_{} |
下付き文字 | 同上。 |
\(x_{\mathrm{a}}\) |
\mathrm{} |
ローマン体 | 物理量等のイタリック体にしたくない文字をローマン体で出力する。 |
\begin{equation}\frac{1}{2}\end{equation} |
\frac{}{} |
分数 |
先の{} は分子、後の{} は分母を入力する。 |
\begin{equation}
\left(2\left(x + \frac{1}{2}\right)\right)
\end{equation} |
\left( |
左括弧 |
中身に応じて大きさが変わる括弧。() 以外にも、{} や[] を指定することもできる。 |
\right) |
右括弧 | ||
\(\sin x\) |
\sin |
サイン | |
\(\cos x\) |
\cos |
コサイン | |
\(\tan x\) |
\tan |
タンジェント | |
\(\log_{x} y\) |
\log |
ログ | 底は下付き文字で実装する。 |
\(\sqrt{x}\) |
\sqrt{} |
平方根 |
\sqrt[3]{} とすることで立方根になる。 |
\begin{equation}\int f_{(x)}dx\end{equation} |
\int |
不定積分 | |
\begin{equation}\int_{a}^{b} f_{(x)}dx\end{equation} |
\int_{}^{} |
定積分 |
先の_{} は下限、後の^{} は上限を入力する。 |
\begin{equation}\sum_{i = 1}^{n}x_{i}\end{equation} |
\sum_{}^{} |
総和 | 同上。 |
\begin{equation}\prod_{k = 1}^{n}a_{k}\end{equation} |
\prod_{}^{} |
総乗 | 同上。 |
出力 | 入力 | 出力 | 入力 | 出力 | 入力 | 出力 | 入力 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
\(\pm\) |
\pm |
\(\mp\) |
\mp |
\(\times\) |
\times |
\(\div\) |
\div |
\(\ast\) |
\ast |
\(\cdot\) |
\cdot |
\(\cdots\) |
\cdots |
\(\partial\) |
\partial |
\(\leq\) |
\leq |
\(\geq\) |
\geq |
\(\ll\) |
\ll |
\(\gg\) |
\gg |
\(\simeq\) |
\simeq |
\(\approx\) |
\approx |
\(\neq\) |
\neq |
\(\infty\) |
\infty |
出力 | 入力 | 出力 | 入力 | 出力 | 入力 | 出力 | 入力 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
\(\alpha\) |
\alpha |
\(\beta\) |
\beta |
\(\delta\) |
\delta |
\(\Delta\) |
\Delta |
\(\varepsilon\) |
\varepsilon |
\(\eta\) |
\eta |
\(\gamma\) |
\gamma |
\(\kappa\) |
\kappa |
\(\lambda\) |
\lambda |
\(\Lambda\) |
\Lambda |
\(\mu\) |
\mu |
\(\nu\) |
\nu |
\(\omega\) |
\omega |
\(\Omega\) |
\Omega |
\(\pi\) |
\pi |
\(\phi\) |
\phi |
\(\Phi\) |
\Phi |
\(\varphi\) |
\varphi |
\(\psi\) |
\psi |
\(\Psi\) |
\Psi |
\(\rho\) |
\rho |
\(\sigma\) |
\sigma |
\(\varsigma\) |
\varsigma |
\(\tau\) |
\tau |
\(\theta\) |
\theta |
\(\upsilon\) |
\upsilon |
\(\xi\) |
\xi |
\(\zeta\) |
\zeta |
\documentclass[dvipdfmx]{jsarticle}
\begin{document}
ここに本文を入力します。
\begin{equation}
\frac{\pi}{2} = \left( \int_{0}^{\infty} \frac{\sin x}{\sqrt{x}} dx \right)^2 = \sum_{k=0}^{\infty} \frac{(2k)!}{2^{2k}(k!)^2} \frac{1}{2k+1} = \prod_{k=1}^{\infty} \frac{4k^2}{4k^2 - 1}
\end{equation}
\end{document}
出力サンプル
表の挿入
表は、\begin{table}[]
と\end{table}
で囲まれた場所に出力されます。[]
の中には、どこに出力をするかを指定します。複数個指定した場合は、左に記入したものから優先されます。また、左右の中心に出力したい場合は、\centering
を用います。\caption{}
を用いることでキャプションを追加することができ、{}
の中にキャプションを入力します。
指定文字 | 意味 |
---|---|
h |
記述した位置に忠実に出力する。 |
t |
ページの上端に出力する。 |
b |
ページの下端に出力する。 |
p |
表専用のページを用意して出力する。 |
表の中身は、\begin{tabular}{}
と\end{tabular}
で囲まれた範囲内に記入します。{}
の中には、表の列の数と文字を寄せる方向を指定します。指定した数がそのまま列の数になります。行は、改行によって増やします。
指定文字 | 意味 |
---|---|
l |
左寄せ |
c |
中央寄せ |
r |
右寄せ |
\hline
を用いることで、罫線を引くことができます。入力しなかった箇所は空欄になりますが、ズレないように注意が必要です。
\documentclass[dvipdfmx]{jsarticle}
\begin{document}
ここに本文を入力します。表\ref{tab:sample}にサンプルを示します。
\begin{table}[hb]
\centering
\caption{サンプル}
\begin{tabular}{cccc}\hline
& 名称 & メーカー & 番号 \\ \hline
電圧計 & denryu-15V & oo社 & E-123 \\
電流計 & 5A-denatu & xx測器 & I-135 \\
検流計 & kenryu & ox計器 & G235 \\ \hline
\end{tabular} \label {tab:sample}
\end{table}
\end{document}
表も、数式同様に相互参照を行うことができます。
画像の挿入
画像は、\begin{figure}[]
と\end{figure}
で囲まれた範囲内に挿入されます。[]
の中にはどこに出力するかを指定します。挿入される画像は.tex
ファイルが保存されているフォルダに直接設置し、\includegraphics{}
でファイル名を指定します。
\begin{document}
の前に\usepackage{bmpsize}
を挿入するのを忘れないでください。
指定文字 | 意味 |
---|---|
h |
記述した位置に忠実に出力する。 |
t |
ページの上端に出力する。 |
b |
ページの下端に出力する。 |
p |
表専用のページを用意して出力する。 |
下のサンプルを実行するときは、同じフォルダにsample.jpgを保存してください。
\documentclass[dvipdfmx]{jsarticle}
\usepackage{dvipdfmx}
\usepackage{bmpsize}
\begin{document}
ここに本文を入力します。図\ref{fig:sample}に示す。
\begin{figure}[hb]
\centering
\includegraphics{sample.jpg}
\caption{サンプルの画像}
\label{fig:sample}
\end{figure}
\end{document}
画像も、数式や表と同様に相互参照を行うことができます。
このページで紹介する方法はここまでです。ここで紹介した方法以外にも、知ると表現の幅が広がる方法がたくさんあります。難易度や使用頻度に応じて他にも紹介していますので、是非参考にしてみてください。